この記事のポイント
- 内定を得ても決められない学生がいる背景には、「選考に通過したい」と「その会社で働きたい」という気持ちの違いがあります。
- 学生は、自分の希望を整理し、仕事内容を比較して初めて、入社先を自分で選ぶ意思を固めていくことがあります。
- 企業の内定者フォローでは、交流回数だけでなく、後から生まれた疑問を確認できる関係が重要です。
「内定をもらいました!」
学生から、うれしい報告が届くことがあります。ところが、その後しばらくすると、「本当にこの会社でいいのでしょうか」「ほかにも、もっと良い会社がある気がします」「内定を承諾するか、まだ迷っています」と相談が届くこともあります。
選考中はその会社に入りたいと一生懸命だったのに、内定が出ると気持ちが変わってしまう。私たちBTwithYouは、就職活動を支援するなかで、こうした学生を見てきました。
今回は、2026年の就職活動に関する調査と、就職活動支援アプリ「ソダッテ!」に寄せられた相談、日々の面談で確認してきたことをもとに、学生が内定後に迷う理由を考えます。
内定を取ることと、その会社で働くと自分で決めることは、必ずしも同じではないのです。
内定を得ても、就職活動は終わらない
2026年10月14日に発表されたマイナビの調査では、2027年卒学生の9月末時点の内々定保有率は86.3%でした。一方、就職活動を続けている学生は20.2%。そのうち内々定を持ちながら活動を続ける学生は、全体の6.5%でした。
別の調査でも似た動きが見られます。株式会社ABABAが2026年9月に実施した調査では、回答した学生809人の内定保有率は88.6%で、29.8%が就職活動を継続していました。
ただし、この29.8%にはまだ内定を得ていない学生も含まれます。内定を持ちながら就職活動を継続していた学生は149人(18.4%)です。調査対象がABABA登録学生であることにも注意が必要です。二つの調査は対象と方法が違うため、数値の単純比較はできません。
もちろん、内定後に活動を続けることが悪いわけではありません。もっと志望度の高い企業に挑戦したい人も、選考結果を待っている人もいます。一方、私たちの支援現場では、内定を得たことで、かえって迷い始める学生もいます。この二つは分けて考える必要があります。
選考中は好きだった会社が、内定後に変わって見える
私たちの相談では、最初から強い関心を持って応募したわけではない学生もいます。企業からオファーが届いたから。人材紹介会社から勧められたから。周囲が就活を始めたので自分も受けなければと思ったから。応募のきっかけはさまざまです。
ところが選考が始まると、学生はその企業に受かろうと頑張ります。企業研究をし、志望理由を考え、面接を練習する。選考が進むにつれて、企業への気持ちが高まることもあります。
しかし内定が出た途端、気持ちが冷めてしまう学生もいます。私たちは面談の中で、これを「選考中の魔法が解ける」ような現象だと感じることがあります。
理由の一つとして考えられるのは、選考に合格したい気持ちと、その会社で働きたいという意思が混ざっていることです。選考中の目標は目の前の面接に通過すること。でも内定が出れば、その目標は達成されます。そこで初めて「本当にここで働きたいのか」という別の問いに向き合うのです。
就活に自信がなく、まずは内定を欲しいと思っていた学生が、内定後に別の可能性を探し始める場合もあります。単なる気まぐれと片づける前に、応募した理由と入社を決める理由が、まだつながっていなかった可能性を考えたいと思います。
「こうしたい」という希望と、「ここを選ぶ」という意思は違う
学生には、まだうまく言葉にできていなくても希望があります。人の役に立ちたい。専門的な仕事をしたい。安心して長く働きたい。生活を大切にしたい。いずれも大切な出発点です。
しかし、希望があることと、具体的な企業を選ぶ意思があることは別です。例えば「人を支える仕事がしたい」という希望にも、人と直接関わる仕事や、技術や仕組みを通じて人を支える仕事など、多くの可能性があります。
私たちは、まず本人の希望を整理することを大切にしています。何をしたいのか。なぜそう思うのか。その希望に関わる仕事はほかにもあるのか。実際の仕事を比較してみても考えは変わらないのか。
こうした過程を経て、学生が自分で応募先を選ぶ。そのとき希望は、具体的な意思に近づいていきます。希望を理解する前に周囲が先に答えを示してしまうと、後から迷うことがあります。
ただし、全員が同じ順番で決めるわけではありません。選考を受けるなかで自分の希望に気づく学生もいます。大切なのは、いつ、何を理由に、その仕事を選ぶようになったのかを確かめることです。
内定者フォローは、交流会を開くだけでは終わらない
企業は内定後、面談、社員交流会、懇親会、職場見学など、さまざまな機会を設けています。どれも学生が会社を理解するための大切な取り組みです。
ただ、社員と話した直後は「よく分かった」と思っても、帰宅してから新しい疑問が出てくる学生がいます。「一人で仕事を進めるのだろうか」「困ったら誰に相談するのだろう」「配属はどう決まるのだろう」。
学生は、説明を聞く前から何を質問すべきか分かっているとは限りません。仕事内容を知って初めて生まれる疑問もあります。
私たちが紹介した学生にも、内定後に質問をしてくる人がいます。一度にすべてを説明することより、後から生まれた疑問を確かめられることが大切だと感じます。
紹介で就職した学生には、内定後も入社後も相談できると伝えています。入社後まで相談に来る学生は少数ですが、相談先があること自体を安心材料にしているという現場観察があります。内定者フォローでも、接点の回数より、必要なときに質問できる関係が重要ではないでしょうか。
企業の良かれと思った対応が、不安を生むこともある
企業が学生との接点を増やそうとしている行動が、学生には違う意味で受け取られることがあります。例えば、頻繁なスカウトや何度もかかる電話を「人が足りない会社なのかもしれない」と受け止める学生もいます。
内定承諾期限が短いと、急いで決めるよりも、期限延長や承諾後の辞退について相談する学生がいます。
内定後のインターンシップやアルバイトも、意思が固まっている学生には仕事を覚える機会になりますが、迷っている学生には負担に感じられることがあります。特に事前に説明がなければ、不安が強まる場合もあります。
だからといって、企業が学生に何も求めてはいけないわけではありません。仕事には責任も難しさもあります。必要な準備があるなら、何を、なぜ求めるのかを率直に説明することが大切です。企業の意図と学生の受け止め方が必ずしも一致しないことを、採用活動の中で意識してほしいと思います。
周囲の言葉で、自分の決心が揺らぐこともある
友人に「本当にそこで決めていいの?」と言われる。親から「ほかにも会社があるのでは」と心配される。SNSや口コミで見た否定的な情報が気になる。こうしたことが、学生の迷いにつながる場合があります。
周囲の意見が悪いわけではありません。本人が見落としていた問題に気づくきっかけにもなります。ただ、自分の判断理由がまだ整理できていないと、他人の一言で揺れることがあります。
口コミを全部信じていなくても、「本当だったらどうしよう」という不安は残ります。そんなときは、周囲の意見を無視するのでも、すべて受け入れるのでもなく、気になる内容を確かめ、企業に質問し、自分が何を大切にして選んだのかをもう一度考えることが必要です。
学生が迷っていることを、志望度が低い証拠だと決めつける必要はありません。自分の選択に納得したいからこそ、確かめている場合もあるのです。
選択肢が増えたことで、安心できた学生
ある学生は、専門的な仕事を希望していました。しかし、希望する仕事に進むのは簡単ではなく、自分の視野が狭いのではないかと悩んでいました。周囲から別の働き方を勧められたことも、迷いにつながっていました。
私たちは学生自身の経験や希望を整理し、もともとの志望分野と、別の分野の仕事の両方を検討できるようにしました。学生は希望する分野ではすでに複数の説明会に参加していたため、まだ十分に理解していなかった別の分野の仕事内容を説明しました。
すると、その仕事にも興味が広がりました。今は二つの分野を改めて調べ、どちらを優先するか考えています。最終的な進路は決まっていませんが、希望した仕事に進めなかった場合にも別の選択肢があると分かり、安心感を得ています。
この事例は、私たちが本人の希望を変えたという話ではありません。本人の希望を理解したうえで、ほかにも可能性があると示し、本人が比較を続けている事例です。選択肢が増えることは、必ずしも決断を難しくするわけではありません。
おわりに|内定を得ることと、納得して選ぶこと
企業にとって採用予定人数を満たすことは重要です。内定を出した学生に入社してほしいと願うことも自然です。
しかし学生にとって内定は、就職活動の一つの目標であると同時に、実際に働く会社を決める出発点になることもあります。
選考中は一生懸命でも、内定後に迷う。周囲の言葉で自信をなくす。仕事を改めて理解するなかで、別の可能性に気づく。そんな学生を決断力がないと片づける前に、何に迷っているのか確認することが大切です。
企業には内定前から、実際の仕事内容、仕事の難しさ、自社が大切にしていることを伝えてほしいと思います。内定後には、新しく生まれた疑問を確認できる機会をつくる。
私たちBTwithYouも、企業についての正確な情報と、学生自身の経験や希望を照らし合わせ、理解したうえで応募や入社を判断できるよう支援しています。
人が支援する意味は、学生の代わりに答えを出すことではありません。本人の希望を整理し、知らなかった選択肢を示し、ときに違う意見も伝えながら、自分で決める過程を支えることです。
内定を承諾してもらうことだけを目標にするのではなく、学生が「この会社で働こう」と自分の意思で選べる採用をつくる。これからの採用で、私たちが大切にしたいことです。
企業理解サポートについて
学生が会社を選ぶ前に、仕事内容を理解するための情報を整えることも大切です。BTwithYouの「企業理解サポート」では、企業が確認した情報を整理し、学生が比較・検討するための材料として提供しています。
本記事について
本記事は、2026年10月時点の公開調査と、BTwithYouが運営する「ソダッテ!」の学生相談および面談での現場観察に基づきます。学生の事例は匿名化した要約であり、直接引用ではありません。現場観察や個別事例は学生全体の統計的傾向や因果関係を示すものではありません。