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学生は、会社に聞きたいことほど聞けない。

2026/11/04 (水)


​この記事のポイント
  1. 学生は、配属や給与、仕事内容など企業に確認すべきことでも、選考への影響や聞き方を心配して第三者に相談する場合があります。
  2. 説明会で「分かった」と答えても、企業を選ぶための情報が足りないことがあります。逆質問も、理解のためではなく評価を意識したものになりがちです。
  3. 企業に疑問を確認した学生は、内定を承諾することも辞退することもあります。大切なのは、学生が正確な情報を得て自分で判断できることです。
就職相談の現場から見えてきた、企業への質問と学生の本音

「配属先は、いつ決まるんですか?」
「希望する仕事を担当するには、どうすればいいんでしょうか?」
「内定者の懇親会には、必ず参加しないといけませんか?」
私たちBTwithYouが運営する就職活動支援アプリ「ソダッテ!」には、学生からこうした相談が届きます。

実は、これらの質問には共通点があります。
本来は、応募先の企業に確認するのが一番確かなことです。
それでも学生は、企業ではなく、私たちに質問してきます。
なぜでしょうか。
学生が企業に質問しないのは、特に疑問がないからでしょうか。それとも、仕事内容を理解していないからでしょうか。

私たちが学生と面談していると、少し違う事情が見えてきます。
今回は、2026年4月から10月にかけてソダッテ!に寄せられた相談と、日々の面談で確認してきたことをもとに、学生が企業に聞けない理由を考えます。
そして、実際に学生が企業へ質問したことで、どんな変化が起きたのかも紹介します。
企業の採用担当者に、ぜひ知っておいてほしい話です。

学生は、企業に聞けば分かることを第三者に聞いている
ソダッテ!には、仕事内容や勤務条件、入社後のことについて、さまざまな質問が届きます。
  • 配属はいつ決まるのか。
  • 給与に成果に応じた手当がある場合、実際にどのくらい受け取れるのか。
  • 希望する仕事を担当するためには、どんな経験や能力が必要なのか。
  • インターンシップで示された契約内容は、どういう意味なのか。
  • 内定後のイベントには、必ず参加する必要があるのか。
学生にとっては、どれも就職先を選ぶための大切な情報です。

ただ、企業によって制度や運用が違うため、一般的な説明だけでは正確に答えられないこともあります。
例えば、希望する職種への配属方法や、給与の具体的な仕組みは、その企業に確認しなければ分かりません。
私たちも、第三者として説明できることと、企業に直接確認する必要があることを分けています。
では、なぜ学生は最初から企業に聞かないのでしょうか。

学生は、質問によって評価が下がることを心配している
面談で理由を尋ねると、学生からは次のような話が出てきます。
  • 「こんなことを聞いたら、選考に影響しませんか?」
  • 「お金の話をしたら、失礼だと思われませんか?」
  • 「会社の誰に聞けばよいのか分かりません」
  • 「大人に失礼だと思われない聞き方が分かりません」
また、給与や昇進などについては、人によって違うため、企業に聞いても明確な答えはもらえないだろうと考えている学生もいます。
実際に質問したものの、担当者から「分からない」と言われ、それ以上聞けなくなったケースもあります。

学生にとって、採用担当者は仕事内容を教えてくれる人であると同時に、自分を評価する立場の人でもあります。
そのため、質問すること自体をためらってしまうのです。
特に、選考中や内定後は、聞き方によって印象が悪くなったり、内定に影響したりしないかと心配する学生がいます。

もちろん、すべての学生がそう考えているわけではありません。
しかし、私たちの相談現場では、知りたいことがあるのに、企業への質問をためらう学生が実際にいることが確認できます。
企業が「質問はありますか」と聞いたとき、学生が「ありません」と答えたとしても、本当に疑問がないとは限らないのです。

いつの間にか、質問が「評価されるための行動」になっている
企業説明会や面接には、学生が企業に質問できる時間があります。
いわゆる「逆質問」です。
本来は、学生が分からないことを確認し、仕事や企業について理解を深める機会のはずです。

ところが、ソダッテ!には、こんな相談が届きます。
「企業に興味があると思ってもらえる逆質問を教えてください」
「何を聞けば、やる気があると思ってもらえますか?」
学生は、質問することまで選考対策として考えているのです。
背景には、質問しないと意欲がないと思われる、というSNSなどの情報もあるようです。

実際の相談では、学生の疑問が次のような質問に変わっていくことがあります。
本当は、どんな仕事をするのか知りたい。
そこで「一日の仕事の流れを教えてください」と質問する。

自分に合う仕事なのか知りたい。
そこで「活躍している社員には、どんな共通点がありますか」と質問する。

希望する仕事に就けるのか知りたい。
そこで「配属はどのように決まりますか」と質問する。

これらの質問が悪いわけではありません。
しかし、企業に伝わる質問の内容と、学生が本当に知りたいことは、必ずしも同じではありません。

例えば「活躍している社員の共通点」を聞かれた採用担当者は、優秀な社員の特徴を説明するかもしれません。
でも、学生が本当に気にしているのは、「自分のような人でも、そこで働いていけるのだろうか」ということかもしれないのです。
企業は、質問された言葉だけではなく、その質問を通じて学生が何を確かめようとしているのかにも目を向ける必要があると思います。

説明会で「分かりました」と言っても、仕事を選べるとは限らない
企業説明会のあと、学生に感想を聞くと、「よく分かりました」と答えることがあります。
ところが、後日、志望理由を考える段階になると、急に手が止まってしまう。
  • 「この会社で何をしたいのか、うまく説明できません」
  • 「ほかの会社と何が違うのか、分かりません」
  • 「そもそも、自分がどんな仕事をするのか想像できません」
そんな相談が始まります。

これは、説明会で何も理解していなかったという意味ではありません。
会社が説明した内容は、確かに理解していたのでしょう。
ただ、その情報を使って、自分が働く会社を選べるほどには理解できていなかったのです。

話を聞いた直後には、何が足りないのか分からないこともあります。
志望理由を考えたり、ほかの企業と比較したりして、初めて必要な情報に気づく。
そんな学生もいます。

そして、同じ経験を何度かすると、学生の受け止め方が変わる場合があります。
以前は「説明会で理解できました」と言っていた学生が、「仕事内容について、あまり説明がなかった」と感じるようになることもあります。
つまり、説明を理解したことと、企業を選ぶための判断材料が揃ったことは、別の問題なのです。
企業が用意した説明を学生が理解しても、学生が自分で判断するためには、まだ情報が足りない場合があります。

質問しないまま、自分に都合よく理解してしまうこともある
学生が企業に質問できないことには、もう一つ問題があります。
説明を十分に理解しないまま、自分なりの意味に置き換えてしまう場合があることです。

例えば、企業から「関連する専門知識を身につけると仕事に役立つ」と説明された学生が、希望している専門業務も担当できるのではないかと期待する。
あるいは、「別の部署へ異動した社員もいる」という話を聞いて、自分も将来はその部署に行けると考える。
「正社員登用制度がある」と聞いて、一定期間働けば必ず正社員になれると思い込む。
いずれも、企業が伝えたことと、学生が受け取った意味が違っています。

もちろん、企業が誤解を招く説明をしている場合もあるでしょう。
しかし、学生自身が、自分の希望に合うように情報を受け取っている場合もあります。
そのまま選考が進めば、内定後や入社後になって、思っていた仕事と違うことに気づくかもしれません。

SNSや口コミ、AIの回答から、特定の仕事や業界について強い不安を持つ学生もいます。
一方で、企業の説明を自分に都合よく受け取って、期待を膨らませる学生もいます。
過度な不安も、過度な期待も、実際の仕事内容を理解する妨げになることがあります。
だからこそ、企業には、学生が誤解しやすい点について、できる限り具体的に説明してほしいと思います。

制度があることと、誰もがその制度を利用できることは違います。
希望を出せることと、必ず希望どおりに配属されることも違います。
こうした違いを明確にすることが、学生の判断を助けます。

企業に質問できたことで、内定を承諾した学生
ここからは、実際の学生の事例を紹介します。
ある学生は、最終選考で一度、不採用になりました。
ところがその後、企業から改めて採用したいという連絡が届きました。

学生にとっては、うれしい話だったはずです。
しかし、すぐに承諾することはできませんでした。
一度不採用になったのに、なぜ今になって採用されるのか。
自分がどう評価されているのか。
理由が分からず、不安だったのです。

そこで、私たちは本人が企業に確認できるよう、質問の伝え方を一緒に整理しました。
学生は企業にメールを送り、その後、面談で説明を受けました。
企業が判断を変えた理由を理解できたことで、学生は納得し、内定を承諾しました。

ここで大切なのは、企業が学生を説得したということではありません。
学生が自分の疑問を企業に伝え、回答を得たことで、自分で入社を決められたことです。

企業に質問できたことで、内定を辞退した学生
一方、別の学生は、内定後の企業見学で違和感を覚えました。
選考中に聞いていた説明と、見学先の社員から聞いた話に違いがあったのです。

しかし、学生は企業に確認することをためらっていました。
内定後にそんな質問をして、印象が悪くならないだろうか。
内定を取り消されたり、入社後の扱いに影響したりしないだろうか。
そうした不安がありました。

私たちは、疑問を残したまま入社を決めるよりも、本人が確認することが大切だと考え、質問の整理を手伝いました。
学生は企業にメールを送りました。
企業からは、詳しい回答が届きました。
回答内容は十分に理解できました。

ただ、確認できた働き方は、学生が希望していたものとは違っていました。
学生は、自分には合わないと判断し、内定を辞退しました。

この事例も、私たちは意味のある結果だったと考えています。
企業の回答が不十分だったから辞退したわけではありません。
企業から正確な説明を受けたうえで、自分の希望とは合わないと判断したのです。

内定承諾と内定辞退。
結果は正反対ですが、二人の学生には共通点があります。
どちらも、企業に質問し、回答を受け、自分で結論を出しました。
私たちが代わりに判断したわけではありません。
学生が納得して決めるために必要だったのは、第三者の意見だけではなく、企業自身からの回答だったのです。

企業が答えることと、第三者が支援すること
私たちBTwithYouは、学生から企業について質問を受けたとき、何でも代わりに答えるわけではありません。
一般的な制度や仕事内容について説明できることもあります。
しかし、個々の企業の配属や待遇、運用については、その企業に確認しなければ分からないことがあります。

学生が何を知りたいのか明確になっていれば、基本的には本人から企業に質問してもらいます。
質問したいことがうまく言葉にならない場合には、内容を整理したり、メールの文章を一緒に考えたりします。
すると、多くの企業は丁寧に回答してくれます。

その回答を受けた学生は、私たちに結論を求めるのではなく、自分で考え、判断することが少なくありません。
企業からの回答をきっかけに、さらに質問を重ね、対話を続ける学生もいます。
ここに、第三者による就職支援の役割があると考えています。

  • 学生が本当に知りたいことを整理する。
  • 企業について、確認できている情報を伝える。
  • 企業にしか答えられないことは、本人が確認できるように支援する。
  • ただし、最後に答えるべきことは、企業自身が答える。
私たちが取り組む「企業理解サポート」でも、学生が企業を選ぶ前に知りたいことを整理し、企業から確認した仕事内容や働き方などの情報を届けています。
学生が仕事を理解し、自分の希望と照らし合わせられるようにするためです。

しかし、第三者の説明だけで、学生の疑問がすべて解消するわけではありません。
最後に必要な確認を企業自身が受け止め、答えてくれることが、本人の判断につながる場合があります。
企業理解を支援することと、企業自身が学生に説明することは、どちらか一方で済むものではないのです。

おわりに|学生の質問は、選考のためだけにあるのではない
学生は、企業について知りたいことを、必ずしも企業に直接質問できるわけではありません。
  • 何を聞けばよいのか分からない。
  • 聞き方が分からない。
  • 評価に影響することが怖い。
  • 質問しても答えてもらえないのではないかと思う。
そんな理由から、第三者に相談する学生がいます。
一方、実際に企業へ質問できれば、学生は回答を真剣に受け止め、自分で判断することがあります。
その結果、内定を承諾することもあれば、辞退することもあります。

企業にとっては、内定辞退という結果を残念に感じるかもしれません。
しかし、仕事内容や働き方を理解したうえで本人が判断できたなら、それは入社後の行き違いを防ぐことにもつながる可能性があります。
企業にお願いしたいのは、学生の質問を、選考意欲や能力を評価するためだけの材料にしないことです。
  • どんな仕事をするのか。
  • 自分にできるのか。
  • 困ったときにどうすればよいのか。
  • 希望する働き方ができるのか。
こうした疑問は、学生が自分の就職先を決めるために必要なものです。
そして、学生は質問の仕方が上手でなくても、必要な情報を得ることができれば、自分で考え、判断できるようになります。
私たちは、学生の代わりに答えを出すのではなく、学生が自分の疑問を理解し、必要な情報を得て、自分で仕事を選べるように支援していきたいと考えています。
学生が質問できるようになることは、企業に選んでもらうためではありません。学生自身が、その企業を選ぶためなのです。

企業理解サポートのご案内
学生が知りたい仕事内容や働き方を、応募前から理解しやすくするために。企業理解サポートでは、企業が確認した情報を整理し、学生が自分の希望と照らし合わせるための材料を届けています。


本記事について
本記事は、BTwithYouが運営する就職活動支援アプリ「ソダッテ!」に2026年4月から10月にかけて寄せられた相談と、日々の学生面談で確認した内容をもとに作成しています。
学生の質問や事例は、個人・企業が特定されないよう、内容を要約し、一部の表現や状況を調整しています。直接引用ではありません。
記事中の事例や観察は、日本の学生全体の傾向を示す統計ではありません。また、企業への質問を支援することが、内定承諾率や入社後の定着率を改善すると証明するものではありません。


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