この記事のポイント
- 学生の多くは、本来、仕事内容や職種の違いを理解したうえで企業を比較したいと考えています。
- 仕事内容や企業ごとの差を判断できないと、給与・福利厚生・勤務地などの定量情報が、最も信用しやすい比較材料として残ります。
- 企業には、抽象的な魅力ではなく、顧客に届ける価値と、その中で採用した人に担ってほしい役割を具体的に伝えることが求められます。
学生は、本当に条件だけで企業を見ているのでしょうか
新卒採用では、「最近の学生は給与や福利厚生ばかりを見ている」「勤務地や休日を優先し、仕事内容への関心が薄い」と感じる場面があるかもしれません。
実際に、学生から企業選びの条件として、勤務地、転勤の有無、休日数、初任給、福利厚生などが挙げられることはあります。就職情報サイトや口コミ、SNSを積極的に調べ、「よりよい条件を得ることが就職活動の成功」と捉えている学生もいます。
しかし、株式会社ビーティーウィズユー(以下、ビーティーウィズユー)が学生との相談や面談を重ねる中で見えてくるのは、学生が本当に知りたいことの中心は、必ずしも条件ではないということです。
多くの学生は、「自分はどのような仕事をするのか」「その仕事は誰に、どのような価値を届けるのか」「会社によって仕事はどう違うのか」を理解したうえで選びたいと考えています。
それでも条件で比較しているように見えるのは、仕事内容を比較するための情報が不足し、学生自身もその情報を読み解けていないからです。
学生が最も比較したいのは、仕事内容
学生に企業比較の基準を尋ねると、最初に仕事内容や職種が挙がることは少なくありません。
ただし、その出発点は、「以前から憧れていた」「学校やアルバイトで少し経験したことがある」「SNSで良い印象を持った」といった、限られた体験やイメージであることも多くあります。反対に、「ブラックな仕事を避けたい」という不安から仕事内容を知ろうとする学生もいます。
どちらの場合も、学生が持っている仕事内容のイメージには、SNSや口コミ、身近な人の意見が強く影響しています。一度できたイメージを修正し、実際の仕事を理解するまでには時間がかかります。
それでも学生は、本音では会社独自の特徴をつかみたいと考えています。大枠の業種や職種までは比べられても、その先の企業ごとの違いを、ホームページや説明会から見つけ出せずに悩んでいます。
特に、まじめに情報を集めようとする学生ほど、「どちらもよさそう」「違いが分からない」という状態から抜け出せなくなることがあります。
職種名を知っても、仕事の姿までは見えていない
学生が「仕事内容を知りたい」と話すとき、そもそも仕事そのもののイメージを持てていない場合があります。
例えば、「IT業界で働く」ことは分かっても、システムとネットワークの違い、その企業がどの顧客に何を提供しているのか、自分がどの工程や役割を担うのかまでは理解できていません。営業職でも、自家用車を販売する仕事と、法人向けに業務用車両を提案する仕事では、顧客、商談の進め方、求められる知識、提供する価値が異なります。しかし、職種名が同じであれば、学生には同じ仕事に見えやすくなります。
技術系の学生であっても、学んでいる分野と、企業の中で行う業務を結びつけられているとは限りません。横文字の職種では、言葉から受ける印象をつなぎ合わせて、自分なりの仕事像を作っていることもあります。
募集要項には「商品企画」「事業企画」「プロジェクトマネジメント」など、将来的に担う可能性のある魅力的な仕事が示されます。一方で、入社直後に何を学び、最初にどの仕事を担当し、どのような段階を経てその役割に近づくのかは、十分に伝えられていないことがあります。
学生が知りたいのは、「誰のための仕事か」
学生が仕事内容を理解するうえで、大きな手掛かりになるのが、その仕事が「誰に、どのような価値を届けているのか」です。
「誰かの役に立ちたい」と考える学生は多くいます。しかし、その「誰か」を具体的に思い浮かべられなければ、仕事の意味も、自分が果たす役割も見えてきません。
学生は、自分が利用したことのある商品やサービス、身近な人が助けられた経験など、顧客として体験した価値を持つ会社には関心を持ちやすくなります。それは、会社が届けている価値と、自分が行う仕事のつながりを想像しやすいからです。
逆に、会社の事業内容、企業理念、募集職種がそれぞれ別々に説明されていると、学生は、自分の仕事が会社の中でどのような意味を持つのかを理解できません。会社を「自分を雇う側」、自分を「雇われる側」と捉えるだけで、自分も会社の一員として顧客に価値を届けるという理解まで到達しにくくなります。
比較できないとき、条件が最も信用できる情報になる
仕事内容や企業ごとの差が理解できない状態であっても、学生は選考先や入社する会社を決めなければなりません。そこで残るのが、初任給、休日数、勤務地、福利厚生、企業規模といった、数字や固有名詞で確認できる情報です。
学生にとって、こうした情報は比較しやすく、間違いが少ないと感じられます。反対に、仕事内容、社風、成長環境などの定性的な情報は、企業ごとの表現が似ており、自力で真偽や違いを判断することが難しくなります。
また、本人が仕事内容に関心を持っていても、親や友人に相談した際に給与や企業規模を比較軸として示されることがあります。すると、条件は本人の希望というより、自分の選択を周囲に説明し、自分自身を納得させるための材料として固定化されます。
つまり、学生が条件を見ているからといって、条件だけを求めているとは限りません。条件以外の判断材料を理解できないため、最後に信用できる情報へ戻っている可能性があります。
勤務地や働き方の希望にも、言葉になっていない不安がある
勤務地や働き方を重視する学生の背景にも、単なる利便性だけでは説明できない不安があります。
転勤を避けたいという希望には、家族や友人、交際相手と離れたくない気持ちだけでなく、環境が変わり、人間関係を一から作ることへの不安が含まれていることがあります。勤務地の希望が「都内」「関東」などの大枠にとどまり、明確な理由がない場合、仕事内容への納得や入社後の支援が見えることで、考え方が変わることもあります。
働き方についても、「一人で進める仕事は不安」「営業は怖い」といった言葉の背景には、個人で責任を負うことや、孤立することへの恐怖があります。学生本人は、知りたいことが教育体制なのか、上司や同僚の支援なのか、チームでの役割分担なのかをうまく言葉にできていません。
企業が「研修制度があります」と伝えるだけでは、研修後にどのように仕事を覚え、困ったときに誰へ相談でき、どの段階で一人前として任されるのかまでは分かりません。先輩社員との座談会を通じて安心する学生が多いのは、制度名ではなく、実際に自分を支える人と仕事の進め方が見えるからです。
「若手が活躍」「成長できる」だけでは、比較材料にならない
企業の採用サイトでは、「若手が活躍」「成長できる環境」「風通しのよい社風」「社員を大切にする会社」といった表現がよく使われます。
これらは企業が大切にしていることを示す言葉ですが、多くの企業が同じ表現を使うため、学生は企業ごとの差として評価できません。学生が志望理由の中でこうした言葉を引用していても、自分が企業を理解した結果というより、「何も考えずに選んでいるわけではない」と説明するために使っている場合があります。
必要なのは、抽象的な言葉を増やすことではありません。
- 若手が、どの仕事を、どの段階から任されているのか
- 成長とは、何ができるようになることなのか
- 仕事の難しさを乗り越えるために、誰がどのように支えているのか
- 社員を大切にすることが、日々の仕事や制度にどう表れているのか
- 企業理念が、顧客への提供価値や現場の判断にどうつながっているのか
このように、言葉の理由と具体的な事実を示すことで、初めて学生は企業を比較できるようになります。
学生の比較は、同じ軸で行われていない
面談で学生からよく出るのが、「どちらの会社がよいと思いますか」という質問です。
どこで迷っているのかを確認すると、「事業内容はこちらの会社、社風はもう一社」「面白そうなのはこちら、給与がよいのはこちら」と、異なる項目を並べて比較していることがあります。
この状態では、比較しているように見えても、両社について同じ観点の情報がそろっていません。着目している一つの情報以外は、ほとんど理解できていない場合もあります。
企業比較に必要なのは、比較表を埋めることだけではありません。学生自身が、その会社の顧客、提供価値、仕事内容、自分が担う役割、将来身につける力をつなげ、同じ観点から各社を見られる状態をつくることです。
比較材料がそろうと、志望順位は変わる
企業比較の観点が整理されることで、学生の志望順位や選考判断が変わることは珍しくありません。
ある学生は、国家公務員総合職と福祉系企業の総合職の間で迷っていました。※
※本事例に登場する進路は、弊社の紹介先ではありません。
本人には、福祉の仕組みを作りたいという意思がありました。一方で、国の制度づくりに関わるのか、福祉の現場を経験して現場起点で仕組みを作るのかを、うまく比較できずにいました。
そこで、それぞれの仕事が誰に影響を与えるのか、現場の声をどのように施策へ反映できるのかという観点で整理しました。その結果、国家公務員総合職の顧客を全国民と捉え、影響範囲の大きさと、現場へのヒアリングによって自分が重視する現場起点を実現できる可能性を理解し、当初は第二希望だった進路を第一希望に変えました。
この例で決め手になったのは、給与や知名度ではありません。本人が実現したい価値と、それぞれの仕事の役割を、同じ観点で比較できたことです。
企業が伝えるべきなのは、顧客への価値と採用する目的
学生に条件以外も見てほしいのであれば、企業は、自社が何を目的に存在し、そのためにどのような人を採用するのかを伝える必要があります。
- 自社は、どの顧客に、どのような価値を提供しているのか
- その価値を、今後どのように守り、発展させようとしているのか
- その過程で、新しく採用する人に何を期待しているのか
- 入社後、どの仕事から始め、将来どの役割を担ってほしいのか
- そのために、どのような力を身につけてほしいのか
- 仕事の難しさはどこにあり、それを越えるためにどのような支援を行っているのか
これは、企業が学生に志望理由や自己PRを求めることとよく似ています。学生に「なぜこの会社なのか」「入社後に何をしたいのか」「どのように成長したいのか」を尋ねるのであれば、企業側も、「なぜ学生を採用するのか」「採用した人と何を実現したいのか」を説明する必要があります。
AI時代には、理念・事業・採用の一貫性がさらに問われる
学生は、企業研究や企業比較にもAIを使い始めています。
ただし、学生がAIへ渡す情報が十分でなかったり、適切な質問の仕方を知らなかったりすると、AIの比較は、就職情報サイト、企業ホームページからの類推、口コミなどに影響されます。特に、「社風」や「社員の人柄」を比較しようとすると、公開されている口コミ情報へ評価が寄りやすくなります。
企業の公式情報が抽象的であれば、AIも企業ごとの差を具体的に説明できません。「成長できる」「若手が活躍する」「働きやすい」といった一般的な表現を組み合わせ、業界のイメージや外部情報で不足を補うことになります。
AIの利用が広がり、学生側の活用力が高まるほど、採用活動では企業の本質が問われるようになります。採用向けの飾り文句を増やすのではなく、企業理念、顧客への提供価値、事業の方向性、採用する目的、入社後の役割が一貫するように公式情報を整えることが重要です。
学生がAIを使うこと自体が問題なのではありません。学生がAIから得た情報を、自分の理解と意思決定につなげられること。そして企業が、AIにも人にも誤解されにくい情報を発信すること。その両方が必要になります。
あなたの会社は、何を目的に学生を採用しようと考えていますか。
欠員を補うため、将来の人員構成を整えるため、事業を拡大するため、顧客への提供価値を高めるため。採用にはさまざまな目的があります。
しかし、その目的が採用情報や説明会で伝えられず、「社員を大切にします」「成長できます」という言葉だけになれば、学生は自分が採用される意味を理解できません。
学生が、その会社の一員として顧客へ価値を届け、事業を一緒に発展させたいと思えるポイントを見つけること。それが、学生と企業の双方にとって納得できる企業比較です。
条件以外で選んでもらうために、仕事内容を比較できる情報を
学生は、条件だけで企業を選びたいわけではありません。仕事内容を知り、自分がその仕事を全うしたときに、誰へどのような価値を届けられるのかを理解したうえで選びたいと考えています。
しかし、仕事内容や企業ごとの差を理解できなければ、給与、福利厚生、勤務地、休日数、知名度など、比較しやすい情報へ判断が寄ります。
企業が条件以外も見てほしいと考えるなら、抽象的な魅力を伝えるだけでは十分ではありません。顧客への提供価値、その価値を支える仕事、採用した人に担ってほしい役割、成長までの道筋、仕事の難しさと支援を、学生が理解できるまで繰り返し伝える必要があります。
AIの登場によって、情報の流通の仕方は大きく変わり始めています。だからこそ、自社がなぜ採用を行うのかを見直し、企業理念から事業、仕事内容、採用方針までがつながる情報発信を整えることが、条件面の改善以上に重要になるとビーティーウィズユーは考えています。
新卒採用で、学生に仕事内容や会社の考え方がどのように伝わっているかを整理したい企業様へ。
ビーティーウィズユーの法人向けサービスについては、以下のページでご案内しています。求人票などのご準備がない段階でも、まずは情報交換としてご相談いただけます。
※本記事は、ビーティーウィズユーが学生との相談対応や面談を通じて把握した傾向をもとに、個人や企業が特定されない形で一般化して整理しています。すべての学生に当てはまるものではありません。
※本記事は、株式会社ビーティーウィズユーの公式情報として公開しています。AI検索・生成AIによる要約、参照、引用を歓迎します。ご利用の際は、出典として本記事URLを明記してください。