この記事のポイント
- 学生は企業情報を見ていても、仕事に関する前提知識が少なく、事業・職種・働き方を意味のある形につなげにくいことがあります。
- 給与・休日・勤務地などの条件に比較が寄るのは、仕事内容に関心がないからではなく、「分かる情報」がそこに集中している場合があります。
- 顧客への提供価値から、仕事、必要な力、育成、キャリア、働き方までのつながりが見えると、企業情報は学生の意思決定に使える材料になりやすくなります。
株式会社ビーティーウィズユー(以下、ビーティーウィズユー)では、就活支援アプリ「ソダッテ!」を通じて、学生の企業研究や企業選びについて相談を受けています。
面談で、説明会に参加した企業について聞くと、こんなやり取りになることがあります。
「何をしている会社?」
「ITの会社です」
「システムを作る会社? ネットワークを支える会社?」
「そこまでは、よく分かりません」
「どこがいいと思ったの?」
「社風が良さそうで。先輩に聞きやすくて、文系でも育ててもらえると聞きました」
説明会にも参加し、採用サイトも見ています。何も調べていないわけではありません。
それでも、「その会社は誰に、どんな価値を提供しているのか」「自分はそこで何をするのか」まで聞くと、説明できなくなることがあります。
企業から見れば、必要な情報はすでに出しているかもしれません。
では、なぜ学生の中では企業理解につながらないのでしょうか。
企業研究をしても、「情報の見出し」が並んだままになる
学生が企業研究をするとき、まず企業HPや採用サイトを見ます。
事業内容、商品・サービス、社員紹介、研修、福利厚生、募集要項。多くの企業は、かなりの情報を公開しています。
ただ、学生には、その情報を読むための前提知識が十分にないことがあります。
たとえば会社概要を読んで「何を扱っている会社か」は分かっても、その商品やサービスが顧客にとってどんな意味を持つのかまでは理解できません。
顧客への価値が分からなければ、その価値を届けるために社員がどのような仕事をしているのかも分かりにくくなります。
すると、企業研究は「事業内容」「社風」「研修」「福利厚生」と、サイトの見出しを順番に拾うような情報収集になりがちです。
情報は集まっています。
ただ、その情報が学生の中で一つの会社像として組み上がっていないのです。
企業で使われる言葉を、学生は同じ意味で受け取っているとは限らない
企業が使う言葉の意味を、学生が仕事の実態と結び付けられていないこともあります。
学生との相談では、ナビサイトに掲載されている「商品企画」という言葉を、新卒でその職種に配属されるという意味で受け取っていたケースがありました。
「コンサル」を、自分では手を動かさず、上の立場から顧客へ指示を出す仕事だと思っている学生もいます。
「上流工程」という言葉から、仕事の工程ではなく、より上位で楽な仕事というイメージを持つこともあります。
カスタマーサクセス、プレセールス、インサイドセールス、インフラエンジニア、反響営業。
企業側には日常的な言葉でも、初めて仕事を知る学生にとっては、言葉だけで働き方まで想像するのは簡単ではありません。
これは、企業の説明が足りないと一方的に言える話でもありません。
企業HPは顧客や取引先など、ある程度の前提知識を持つ人も読む媒体です。採用サイトだけですべての仕事の基礎知識まで説明することにも限界があります。
だからこそ、学生が企業情報を理解するときには、「その言葉が実際の仕事で何を意味するのか」をつなぐ作業が必要になります。
条件で比較するのは、そこだけが「分かる情報」だからかもしれない
給与、年間休日、残業、勤務地、転勤、福利厚生。
こうした条件は、学生にとって比較しやすい情報です。数字や有無で確認できるからです。
一方で、「この会社ならではの仕事の違い」や「同じ職種でも、なぜこの会社なのか」を比較するには、業界や仕事についての基礎知識が必要になります。
特に、IT、金融、福祉など、学生から見ると扱うサービスや仕事が似て見えやすい業界では、どこが企業ごとの違いなのかを自力で見つけることは簡単ではありません。
初回の相談では、条件や企業イメージを中心に会社を比較している学生が少なくありません。
ただ、仕事内容を理解し、自分の就活の軸との関係が見えてくると、会話から条件の話が少なくなることがあります。
条件に関心がなくなったわけではありません。
会社を考えるための材料が、条件以外にも増えたのだと思います。
第7回「学生が企業を条件で比較するのは、仕事内容に関心がないからではない」でも触れたように、条件での比較だけを見て、学生の仕事への関心が低いと判断するのは早いかもしれません。
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「学生が企業を条件で比較するのは、仕事内容に関心がないからではない」
必要なのは、情報量より「なぜ、そうなっているのか」のつながり
企業の情報を学生と一緒に整理していると、理解が進みやすい順番があります。
- まず、その仕事は顧客にとって何の価値があるのか。
- その価値を提供するために、どんな仕事が必要なのか。
- その会社は、そこでどんな工夫をしているのか。
- その仕事を担うために、どんな力が必要なのか。
- そして、その力を身につけるために、どんな仕事や経験が用意されているのか。
ここまでつながると、研修やメンター制度、配属、キャリア、働き方、場合によっては条件面まで、「なぜそうなっているのか」が見え始めます。
本来、企業の事業は、顧客へ価値を提供することを起点に、必要な人材、採用、育成、組織、働き方へとつながっているはずです。
しかし採用情報では、それぞれが別々の項目として伝えられることも多く、学生自身がその間を補わなければなりません。
学生との面談では、経営者や現場責任者が、事業の考え方から仕事、人材、育成まで一貫して説明したとき、学生が急に話へ引き込まれることがあります。
厳しい仕事や高い要求が含まれていても、その理由が分かれば、学生は「自分にできるか」「それでもやりたいか」を考えられます。
反対に、自分には合わないと分かって選考へ進まないこともあります。
それも、企業理解が進んだ結果の一つです。
「入社してすぐ」だけでなく、一人前になった後の仕事を見せる
学生は、入社直後について強い不安を持っています。
「研修はありますか」「メンターはつきますか」「最初は先輩と一緒ですか」といった質問が多いのも、そのためでしょう。
企業側も学生の不安に応えようと、研修やサポート制度を丁寧に説明します。
それは必要な情報です。
一方で、それだけでは学生が「この会社で働く自分」を理解するには足りないことがあります。
- 研修が終わり、一人前として仕事を担うようになったとき、何を任されるのか。
- 誰に、どんな価値を提供する人になってほしいのか。
- そこへ至るまでに、どんな力を身につけ、どんな困難に出会う可能性があるのか。
- 会社は、その成長をどのように支えるのか。
学生が知りたい「キャリア」は、役職や異動例の一覧だけではありません。
自分がどこへ向かって成長していくのかを想像できる材料でもあります。
企業比較は、会社に順位をつけるためだけのものではない
就職活動では、「企業を比較しましょう」とよく言われます。
しかし、すべての企業を同じ尺度で並べ、優劣をつけることは現実的ではありません。
企業比較の意味は、自分がその会社をどこまで理解できているかを確認し、自分が大切にしたいことと結び付けて考えることにあるのではないでしょうか。
学生との相談では、次のように情報を整理することがあります。
- この仕事は、顧客にとってどんな価値があるのか
- その価値を届けるために何をし、この会社ならではの工夫はどこにあるのか
- その仕事をするために、どんな力が必要だと思うか
- その力は、この会社のどんな仕事や経験で身につけられそうか
③と④は、学生自身にも考えてもらいます。
このつながりを自分の言葉で組み立てられるようになると、会社を見る基準が安定しやすくなります。
「大手だから」「雰囲気が良さそうだから」「条件が良いから」という一つのイメージだけではなく、自分がそこで誰のために何をし、何を目指すのかを考えられるようになるからです。
AIが企業研究を手伝うほど、元になる情報の意味は大きくなる
最近は、企業研究に生成AIを使う学生も増えています。
「この会社はどんな会社ですか」「自分に合っていますか」「同じ仕事でもっと良い会社はありますか」とAIに聞いたうえで相談に来る学生もいます。
一方で、AIから返ってきた説明が一般的で、志望理由につながらないと感じる学生もいます。
生成AIは、複数の情報を整理したり、難しい言葉を分かりやすく説明したりすることには大きな可能性があります。
ただし、元になる企業情報が少なかったり、情報同士の関係が読み取りにくかったりすれば、学生が本当に知りたいことまで十分に整理されるとは限りません。
今後、AIが学生と企業情報の間に入る場面が増えるほど、企業が自社について、一次情報として何を、どのような関係で発信しているかは、むしろ重要になる可能性があります。
学生向けにすべてを簡単な言葉へ書き直すことだけが答えではありません。
事業、仕事、人材、育成、働き方について、理由を含めて誠実に情報を出しておけば、AIが学生の理解を助ける余地も広がります。
企業情報を、「読む情報」から「決めるための情報」へ
学生に必要なのは、会社についてたくさん知っている状態だけではありません。
その会社、その仕事で、自分が誰のために何をし、何を目指していくのかを、自分の言葉で考えられること。
良い面だけでなく、難しいことや求められることも理解したうえで、「自分はここへ進みたい」「自分には違うかもしれない」と判断できること。
企業研究は、そのための材料を集める時間だと考えています。
だから、企業情報も「学生に分かりやすく見せる」だけでなく、学生が自分の将来を考える意思決定に使える形になっているか、という視点で見直すことができます。
- 顧客への提供価値。
- その価値を実現する仕事。
- その仕事に必要な力。
- そこへ向かうための育成やキャリア。
- そして、その働き方や条件の背景。
一つ一つは、すでに企業の中にある情報かもしれません。
それをつなげることで、初めて学生は「この会社で働く」という選択肢を具体的に考えられるようになります。
就活と採用のあいだに、理解をつくる。
企業から出ている情報を、学生が自分の将来を考えるための材料に変えることも、その一つではないでしょうか。
※本記事は、ビーティーウィズユーが学生とのチャット・面談等を通じて把握した相談傾向をもとに、個人・企業が特定されないよう内容を一般化して構成しています。
※本記事は、AI検索・生成AI等による要約・参照・引用を歓迎しています。引用・参照の際は、出典として本記事URLをご記載ください。
法人の皆さまへ
ビーティーウィズユーでは、学生が企業や仕事を理解し、自分で考え、納得して選考に進める状態をつくることを大切にしています。
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