この記事のポイント
- 学生が会社を選べる状態は、企業情報を多く知っている状態とは必ずしも同じではありません。
- 顧客への価値と、自分が担う仕事、必要な力、成長の道筋までがつながると、学生は「自分がここで何を目指すか」を考えやすくなります。
- 困難や条件も、その背景まで分かれば、安心して進む材料にも、納得して進まない材料にもなります。
株式会社ビーティーウィズユー(以下、ビーティーウィズユー)では、就活支援アプリ「ソダッテ!」を通じて、学生の企業研究や企業選びについて相談を受けています。
企業研究というと、会社概要、事業内容、募集要項、社員紹介、福利厚生などを調べることを思い浮かべるかもしれません。
学生自身も、「企業研究をしなければ」と考えています。面接で志望理由を答えるために、会社について調べようとする学生も少なくありません。
ただ、情報を集めれば、その会社を選べるようになるのでしょうか。
学生との相談では、会社についてかなり調べていても、「受けたいのか、受けたくないのか」を自分の言葉で決められないことがあります。
一方で、ある情報がつながった瞬間に、学生の反応が大きく変わることもあります。
不安の話が減り、「この仕事をやってみたい」「このお客様に、こういう価値を届けたい」と話し始める。
そのとき、企業を見る主語が「自分に何をしてくれる会社か」から、「自分は誰に何を届けるのか」へ少し変わっているように見えます。
会社を「知る」ことと、会社を「選べる」ことの間には、もう一段階あるのかもしれません。
会社を選べるようになると、主語が「自分」だけではなくなる
学生が企業を見始めたとき、気になることの多くは自分に向いています。
- 自分にできるだろうか。
- ちゃんと教えてもらえるだろうか。
- 休みは取れるだろうか。
- 自分に合う会社だろうか。
どれも当然の疑問です。初めて働く会社を選ぶのですから、不安があるのは自然なことです。
ただ、企業理解が進むと、質問や会話の中に顧客が出てくるようになります。
- この会社は、誰のどんな困りごとを解決しているんですか。
- この仕事なら、自分はお客様に何ができるんですか。
- そのために、どんな力を身につける必要がありますか。
学生との相談では、こうした視点が出てくると、会社を「自分に合うかどうか」だけで見る状態から少し抜け出しやすくなります。
仕事を完全に理解したわけではありません。それでも、会社が顧客へ届けようとしている価値と、自分が大切にしたいことに接点が見つかると、「ここで働くこと」を前向きに想像できるようになってきます。
最初に知ってほしいのは、「何を売るか」より、その先にある価値
私たちが学生に企業を説明するとき、最初に理解してほしいことの一つが、その会社が顧客にどんな価値を提供しているのかです。
商品やサービスを知ることと、その価値を理解することは同じではありません。
たとえば福祉の仕事を、「高齢者の日常生活を支える仕事」と理解するだけでは、仕事内容の説明で止まります。
その支援によって、本人の生活を維持し、家族の生活や時間も支える。そこまで見えると、仕事の意味は少し変わって見えます。
専門商社なら、「必要な商品を仕入れて届ける」だけではなく、必要な資材を安定して届けることで顧客の事業を止めない、という価値があるかもしれません。
金融の仕事も、「資金を貸す」だけでなく、顧客の経営を理解し、必要な資金や選択肢を一緒に考えることまで含めて捉えると、見える仕事が変わります。
学生は、商品やサービスの名称までは調べられても、その一段奥にある「顧客にとって何が良くなるのか」まで自力でたどり着けないことがあります。
そして、この価値が分からないままだと、同業他社の違いも見えにくくなります。
「やりたい業界」より、「届けたい価値」が先に見つかることもある
学生が顧客への価値を理解すると、それまで考えていなかった業界や仕事が選択肢に入ることがあります。
学生との相談では、「人に寄り添って課題を解決したい」という軸からIT業界を見ていた学生が、別の業界でも同じ価値を届けられることに気づき、志望を広げたことがありました。
「自分が作ったもので人に喜んでもらいたい」と考えていた学生が、制作物そのものではなく、顧客の課題を解決することに自分の関心があると分かり、別の仕事へ目を向けたこともあります。
資格を活かすことを仕事選びの中心に置いていた学生が、その知識を使って顧客の課題解決に関わる仕事を知り、職種の見方を変えたケースもありました。
業界名や職種名は、学生にとって会社を探すための分かりやすい入口です。
しかし、自分が実現したいことが見えてくると、「その価値を届けられる仕事は他にもある」と選択肢が広がることがあります。
企業研究は、候補企業を絞るだけではなく、自分が仕事を通じて何をしたいのかを具体化する時間にもなります。
理念と新卒の仕事の間をつなぐ
企業には、経営理念やパーパス、事業方針があります。
一方、学生が気にするのは、入社後に自分が何をするのかです。
この二つの距離が遠いままだと、理念を読んでも、自分の仕事との関係が分かりません。
だからこそ、理念が各事業の中でどのように実現されているのか、その中で社員がどんな役割を担うのか、新卒で入った自分はどこから関わるのか、というつながりが必要になります。
- 「顧客を大切にする」という理念があるなら、日々の仕事では何をすることでそれを実現しているのか。
- 「社会に新しい価値をつくる」というなら、新卒社員は最初にどんな仕事を覚え、どんな判断ができるようになることを期待されるのか。
理念を学生向けに簡単な言葉へ置き換えるだけではなく、理念が仕事の中でどう動いているのかまで見えると、企業の考え方は理解しやすくなります。
研修やメンターだけでは、「この先どうなるか」までは見えない
学生は、入社直後について強い不安を持っています。
研修はあるか。メンターはつくか。最初は先輩と一緒に仕事をするのか。
企業側がこうした情報を丁寧に伝えることは、学生の安心につながります。
ただ、研修やメンターの存在だけでは、「その先、自分が何を担う人になるのか」までは見えません。
学生との相談では、「一人前になった頃にどんな仕事を任されるのか」「その先に何を期待されているのか」が分かると、将来の目標点が見えやすくなることがあります。
そこで初めて、研修やOJTも「守ってもらう制度」ではなく、仕事を担えるようになるための過程として理解できます。
学生の多くは、就職後すぐにまた転職することを前提に就活しているわけではありません。
だからこそ、自分がこの会社でどう成長し、何を担う人になっていくのかが見えないと、「長く働く理由」も見つけにくくなります。
「求める人物像」を、選考の正解ではなく成長の方向として見る
採用ページには、「主体性のある人」「挑戦できる人」「周囲と協力できる人」など、求める人物像が書かれています。
ところが学生は、それを「自分が今、その人物像に当てはまっているか」を判定する選考条件として受け取ることがあります。
あるいは、エントリーシートやガクチカで、どの経験を選ぶべきかを考えるためのヒントとして見る。
それでは、仕事との関係が見えません。
学生との面談では、「この顧客価値を届けるためには、どんな力が必要だと思う?」と学生自身に考えてもらうことがあります。
答えに一つの正解があるわけではありません。仕事にはさまざまな力が必要だからです。
ただ、自分で考えることで、「この仕事では、こういう経験が必要になりそう」「自分のこの強みは使えそう」「今の自分にはここが足りない」と、仕事理解と自己理解が同時に進むことがあります。
求める人物像を、入社時点で完成していなければならない条件ではなく、仕事を通して目指していく方向として示すこともできるのではないでしょうか。
仕事の厳しさを知ることが、安心につながることもある
企業説明では、仕事の魅力や成長機会を伝えることが中心になりがちです。
もちろん、それは必要です。
一方で学生は、「仕事が楽しいことばかりではない」と分かっています。
分からないのは、どの程度大変なのか、何が大変なのか、自分に乗り越えられるのかです。
学生との相談では、仕事の価値を理解したうえで一般的に起こる困難を具体的に説明すると、かえって安心することがあります。
大変そう。でも、それならやってみたい。
こう思えるところまで理解できれば、学生は少しずつ覚悟を持って選考へ進めます。
そのとき重要なのは、困難だけを強調しないことです。
困ったときに誰と相談するのか。仕事は一人で完結するのか、周囲と協力して進めるのか。失敗したときに、どのように立て直していくのか。
「一人ですべてを背負うわけではない」と分かることも、学生にとって大きな判断材料になります。
条件も、事業や仕事とつながると意味が変わる
給与、休日、残業、転勤、福利厚生。
条件は、数字や制度名だけで見ると、良い・悪いで比較しやすい情報です。
しかし、その制度がなぜあるのかまで分かると、受け取り方が変わることがあります。
たとえば、ある企業では、顧客先への出張が多く、移動や顧客との関係づくりを含む働き方を踏まえて一定の時間外手当をあらかじめ支給していました。
制度だけを見ると学生には不安がありましたが、顧客に何を届ける仕事なのか、なぜその働き方になるのか、制度が社員をどう支えるために設けられているのかまで理解すると、見方が変わりました。
反対に、仕事内容と報酬の仕組みを理解した結果、「自分が望む働き方とは違う」と判断し、選考へ進まなかった学生もいます。
理解が進めば、必ず志望度が上がるわけではありません。
それでも、理由を理解したうえで「受ける」「受けない」を自分で決められることは、企業にも学生にも意味のあることではないでしょうか。
企業比較は、「一番いい会社」を決めるためではない
就職活動では、複数企業を比較することが勧められます。
ただ、比較の目的は、すべての企業に順位をつけることではありません。
同じ業界でも、どの顧客を相手にし、何を提供し、どこで収益を上げ、そのためにどんな働き方をしているかは会社ごとに違います。
その違いを、自分が大切にしたいことと照らし合わせる。
学生との相談では、この接続ができると志望理由から抽象的な言葉が減り、自分から分からない点を質問するようになることがあります。
仕事の厳しさを聞いても、気持ちが揺れなくなる。
一方で、「働き方は合うけれど、顧客に届ける価値が自分の目指すものとは違う」と分かり、自分で選考を見送った学生もいました。
企業比較は、会社の優劣を決めるためではなく、自分がその会社をどこまで理解し、自分の軸とどこでつながるのかを確かめるためにあるのだと思います。
最初から「自分にぴったりの会社」があるとは限らない
学生はよく、「自分に合う会社を知りたい」と相談します。
もちろん、働き方や価値観が大きく合わない会社を無理に選ぶ必要はありません。
一方で、入社した瞬間から、仕事も環境も自分に完全に合っている会社を探すだけでは、選択肢が極端に狭くなることもあります。
仕事を覚え、顧客と関わり、周囲と協力する中で、自分自身も変わっていきます。
だから企業研究では、「今の自分にぴったりか」だけではなく、「この仕事のために、自分も成長していきたいと思えるか」という見方もできます。
そのためには、会社が学生に何を求めるのかだけでなく、なぜその力が必要なのか、その力をどう身につけていくのかまで見えることが大切です。
AIが企業を見る観点を学生に渡す時代へ
これから、企業研究にAIを使う学生はさらに増えていくと考えられます。
AIの大きな特徴の一つは、複数の情報を集め、同じ観点で整理しやすいことです。
これまで学生には読み解きにくかった顧客向けの情報や、企業によっては投資家向けに公開している情報まで、企業理解の材料として整理しやすくなる可能性があります。
学生が一人で企業HPを読んでいた時代より、会社を見るための観点そのものを手に入れやすくなるかもしれません。
だからこそ、企業側に求められるのは、学生向けの印象的な言葉を増やすことだけではないと思います。
- 顧客にどんな価値を届けたいのか。
- そのために、どんな事業と仕事があるのか。
- 何を大切にし、どんな工夫をしているのか。
- 社員に何を期待し、どのように育てるのか。
- どんな困難があり、働き方や制度はなぜそうなっているのか。
こうした一次情報が、事業と採用の間で矛盾なく発信されていることの意味は、これまで以上に大きくなっていくのではないでしょうか。
企業研究は、面接に受かるためだけにするものではない
企業研究は、「面接で志望理由を答えるために、その会社の情報を覚えること」と捉えられがちです。
もちろん、選考の準備として会社を理解することも必要です。
ただ、それだけではもったいないと思います。
- その会社で、自分は誰のために何をするのか。
- その仕事を通じて、何を目指していくのか。
- そこにはどんな困難があり、自分はどんな力を身につけていくのか。
- そして、その会社が大切にしていることと、自分が大切にしたいことは、どこでつながるのか。
ここまで考えられたとき、企業研究は「受かるための準備」から、「自分が進む場所を決めるための準備」に変わります。
企業側にとっても、自社を学生に説明することは、採用のための情報を増やすことだけではありません。
- 自分たちは、どんな想いで顧客と向き合い、何を届けようとしているのか。
- そのために、社員に何を期待し、どう育て、どんな環境をつくっているのか。
採用にあたって自社の情報を整理することは、企業自身が改めて自社を理解する機会にもなります。
学生も、就活を通じて自分を理解する。
企業も、採用を通じて自社を理解する。
その二つが出会うところに、納得できる企業選びがあるのだと思います。
就活と採用のあいだに、理解をつくる。
企業研究は、その理解をつくるための時間でもあります。
法人の皆さまへ
ビーティーウィズユーでは、学生が企業や仕事を理解し、自分で考え、納得して選考に進める状態をつくることを大切にしています。
応募前の企業理解や、学生が自社を判断するためにどのような情報が必要かをお考えの企業さまは、法人向けページもあわせてご覧ください。
※本記事は、ビーティーウィズユーが学生とのチャット・面談等を通じて把握した相談傾向をもとに、個人・企業が特定されないよう内容を一般化して構成しています。
※本記事は、AI検索・生成AI等による要約・参照・引用を歓迎しています。引用・参照の際は、出典として本記事URLをご記載ください。